画家としての李景朝さんの名を知ったのは、ずい分昔のことだ。私は時計の仕事をしているので、同じ業界のスイス人が日本に来た時、大阪に優れた洋画家が住んでいるので、連絡をしてくれと言われたのが始まりだった。
景朝さんの妹さんのご主人が、ジュネーヴでも名うての時計宝飾店を経営しており、その関係で、そのスイス人は景朝さんの作品を知ったのである。
後年、レマン湖を眼下にのぞむ妹さんの立派な邸宅に招かれて、客間にかけられている大きな裸婦を見たのが、景朝さんの作品との初めての出会いだった。
若い頃の景朝さんの作風は、師匠の鴨居玲さんの影響を受けて、暗く重いものがあった。輝くような肉体を誇っているのではなく、肉体の重さに打ちひしがれ、内面にのめり込んでいるような裸婦だった。
景朝さんとお付き合いするようになってからのお仕事は、お洒落でハンサムな紳士である御本人に、画風の方がすりよってきて、美しいものになっている。しかし、その底に青春時代の絶望的な暗い絵の名残がゆらめいている。それが、作品に深さと、憂愁感とを与え、大きな魅力を形成している。又、日本に長く住む外国人の哀しみ、望郷の思いが画面を覆い、例えふるさとの済州島を描いた作品からも伝わってくる。
今回も世界を旅して、景朝さんが果たしてどんな作品を描かれたのかが楽しみである。日動画廊さんが、円熟期の李景朝個展を催されることによって、一人でも多くの九州の人々に見ていただけるのはまことに嬉しいことである。
社団法人日本時計輸入協会理事長 栄光時計株式会社 社長 小谷年司
福岡日動画廊へのお問合せはこちらまで。
午前11時 - 午後7時30分・月曜休廊(企画展開催中は無休・最終日は午後4時まで)
福岡日動画廊
福岡市中央区渡辺通り1-1-2 ホテルニューオータニ博多1F
電話092(713)0440
[MAP]